改正区分所有法解説②:出席者多数決制度導入の意味
- 山崎清博
- 8月5日
- 読了時間: 3分
2026年4月1日に施行予定の改正区分所有法の最大の目的は管理不全マンション対への対策です。管理不全に陥ったマンションでは、マンション管理に非協力的な区分所有者や、外部居住区分所有者の増加、そして所有者不明住戸の増加により、区分所有者の合意形成が困難となり、それが管理改善の大きな障壁となっていました。
こうした課題を解消し、マンション管理の意思決定を円滑に進めるため、新たな制度として「出席者多数決制度」が導入されます。この制度は、主に管理運営に関する議案の決定に適用されることになりますが、従来の合意形成が困難になっていた現状を打開するための重要な改正と言えるでしょう。
1.従来の合意形成の課題
現行法では、マンションの重要な決議(規約変更、建て替え等)には、区分所有者全体を母数とした多数決が必要でした。しかし、以下のような問題がありました:
所在不明の所有者がいると、賛成率が足りず決議が成立しない
出席しない所有者も反対者と同様に扱われる
実質的に総会決議不能で管理不全に陥るマンションが増加
2.出席者多数決制度とは?
改正法では、集会に出席した区分所有者(書面・代理含む)を母数とする多数決で決議が可能となる制度が導入されます。つまり、欠席者や所在不明者を母数から除外することで、実際に意思表示をした所有者の意見を反映しやすくなります。
例:従来 VS 改正後の決議成立要件(3/4決議要件の場合)
状況 | 従来の制度 | 出席者多数決制度 |
所有者数:100人、出席者:60人、賛成者:45人 | 賛成率45% → 不成立 | 出席者中の賛成率75% → 成立 |
この制度により、実質的に管理に関与している所有者の意思が尊重されるようになります。
3.制度導入の背景と意義
高経年マンションの増加:築40年以上のマンションが急増し、修繕や建て替えの必要性が高まっています
所有者不明問題:相続未登記や連絡不能な所有者が増え、意思決定が停滞
災害対応の遅れ:被災マンションの再建が進まない原因の一つが合意形成の困難さ
出席者多数決制度は、こうした課題に対し、柔軟かつ現実的な意思決定の仕組みを提供するものです。
4.注意点と今後の対応
出席者多数決制度は以下の決議に採用されます
普通決議、規約改正、共用部分の変更、復旧決議、法人の設立、法人による区分所有権取得、義務違反者に対する使用禁止・競売請求・引き渡し等の決議。但し、普通決議以外には、「区分所有者の過半数であって議決権の過半数を有する者が出席していること」という議決定足数のルールがあります
この制度は、建て替えや敷地売却などの重大な決議には適用されないため、慎重な運用が求められます
管理組合は、規約の見直しや説明資料の整備を進め、制度の理解と周知を図る必要があります
所有者間の信頼関係を築くことが、制度の円滑な運用につながります
まとめ
出席者多数決制度は、マンション管理の意思決定を「現実に参加している人々の声」で動かすための仕組みです。管理不全を防ぎ、健全なマンションライフを守るために、所有者一人ひとりが制度を理解し、積極的に関与することが求められます。
Comments