マンション管理において、我々が注目すべき「管理計画認定制度」。
この制度には、様々な狙いが込められています。それぞれの意味を整理してみましょう。
① 国土交通省の方針に沿った誘導
管理計画認定制度は、全国の管理組合を国土交通省の意図に沿った方向に誘導することが意図されています。狙いは高いレベルで適切な管理が行われる持続可能性の高いマンションの実現です。背景には理事会運営に行き詰まるマンション管理組合への危機感があります。
②会計の健全性
管理費と修繕積立金の区分経理がしっかりなされていること。管理費・修繕積立金の滞納が少ないことも条件のひとつです。
③ 最新標準管理規約の準拠
本制度は、最新の標準管理規約の完全準拠を求めています。これを通じてマンションに将来起こり得る様々な事態への対応強化を目指しています。様々な事態とは、住民の高齢化、建物の老朽化、大規模修繕など、そして突然の災害や建替えも視野に入っています。管理規約の整備は最優先課題です。
④ 修繕積立資金の確保
国は令和3年にマンションの修繕積立金に関するガイドラインを明示しました。必要な月次積立金の平均額を示し、下限値を上回ればいいとしていますが、決して低い数値ではありません。十分な修繕積立資金を用意することで、将来の修繕計画に備え、マンションの持続可能性を確保させるのが目的です。
⑤ モレのない長期修繕計画の作成
同じく令和3年に改訂された国の長期修繕計画のガイドライン標準様式の完全準拠を求めています。粗末な計画で行き詰まることのないよう、モレのない修繕計画を作成させる狙いがあります。
⑥ 機械式駐車場改修費用の準備
見落としがちな機械式駐車場の改修費用を資金計画に反映させます。
⑦ 災害の準備
管理規約のみならず、建物の強化、防災体制や訓練等、地震や台風などの災害に対応するための整備を行います。
⑧ 高齢化・認知症・孤独死対応の準備
組合員名簿・居住者名簿の整備を制度の認定基準に入れました。高齢化や認知症、孤独死に対する準備、空き室問題の備えです。
⑨ 周辺法への対応
宅地建物取引法や個人情報保護法、人権法など、マンション住環境を取り巻く様々な法の変化への対応も要求されています。
全国の多くのマンションにとって、これらの基準は、とても高いハードルに見えるでしょう。
しかし、これらは管理組合が必ず取り組まなければいけない課題です。怠慢な運営を続けていたマンションにとっては、今までの価値観を変えなければならないこともある。それでもやらなければなりません。区分所有者全員の大事な資産です。
目指すべきはマンションの存続可能性の向上です。
令和4年マンション管理適正化法の改正によって、初めて国が基準を明示しました。
この制度はマンション管理組合が向かうべき方向を示しています。
国と地方自治体が共同で進める管理計画認定制度。
これらの基準をひとつひとつクリアしていけば、マンションの未来は明るいものとなるでしょう。100年マンションも夢ではありません。
マンション管理士もまた、国や地方自治体と協力し、使命感を持って、管理計画認定制度の推進に取り組んでまいります。
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