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執筆者の写真山崎清博

100年マンションという名の客船

更新日:2023年6月6日

マンションは大型客船に似ていると思います。

船は建物、船内設備はマンション設備、乗客は区分所有者。

船長は総指揮官であり先々まで航行の安全と乗客の安全を守る最高責任者。

航海士、通信士、機関士は高度な知識を駆使して船長を助けて

運航にあたり、船と船客を安全に目的地まで導きます。


大型客船の操船には海技士という国家資格が必要なことはご存知でしょうか。


海技士とは、20t以上の大型船舶の船舶職員(船長・航海士、機関長・機関士、通信長・通信士)として働くために必要な資格で、船の運転免許に相当します。

海技士の国家資格は「航海」「機関」「通信」「電子通信」の4つの分野に1~6級まで分けられており、航行する場所や船の総トン数によって対応する級が異なります。


ちなみに、大型客船の船長や船舶職員になるためには、

「海技士(航海)」の免許が必要で、20t以上の大型客船に乗り組む海技士には、4つの分野すべてにおいて1級または2級の免許が必要とされているようです。


目を我が国のマンションに向けてみましょう。


マンションという集合住宅は区分所有者の自治が原則で、

区分所有者で組織する管理組合がほぼボランティアでマンションの管理を行っています。


つい最近まで、国は「個人の所有物には口をはさまない」という概念でマンションをみていました。


管理組合を「権利能力なき社団」として位置付けて、区分所有者らで話し合って勝手にやりなさいとしたのです。どうせ自分のマンションを修理するだけだからそれでいいだろうといった具合です。


マンション管理の難しさや管理組合が行き詰った時の社会的悪影響など


全く念頭になかったとしか思えません。


2001年施行のマンション管理適正化法で管理会社を認可制度にしたり、相談の受け皿としてマンション管理士制度を創設したりしましたが、管理組合については「適正な管理に努めよ」の一言であり、

組合員には「管理組合の一員としての役割を適切に果たすよう努めよ」でした。

これは2022年のマンション管理適正化法改定に至っても変わっていません。


​この結果、我が国の管理組合は「マンション標準管理規約」を唯一のガイドラインとして、

これをバイブルとしてきたのです。


しかし、これだけではまるで教則本片手に車を運転(客船を操縦)するようなものです。

とても次から次へと押し寄せる様々な問題に対応できるものではありません。


ましてや役員は輪番制で1~2年で交代していくのです。

笑い話ではなく、理事長をくじ引きで決めているところもあります。

果たして、これで将来を見通した適切なマンション管理ができるものでしょうか。


皆さんのマンションはどうですか?


もしかして「マンション管理会社に任せているから大丈夫」なんて思っていませんか。


いま全国の管理組合が抱えている「建物の老朽化による修理の急増と修繕の大型化」「住民の高齢化がもたらすもの」「資金不足」「役員のなり手不足」「住民トラブルの深刻化」「合意形成難」「住民の無関心」「役員の暴走や利益相反」等の諸問題は管理会社が解決するものではありません。

彼らは運営のプロですが、あくまでも管理組合の業務を代行するのが仕事です。

解決責任を負ったり、組合の判断を導いたりする立場にはありません。

これらの問題は、管理組合が主体となって解決していくしかないのです。


しかしながら、知識や経験の少ない管理組合の役員にはあまりに荷が重過ぎます。


マンション管理運営には、少なくとも「時効・債務不履行・契約不適合責任・不法行為・相続等に関わる民法」「区分所有法」「住宅品質確保法」「不動産登記法」「建築基準法」「都市計画法」「水道法」「消防法」「警備業法」などの法令・法律の知識。加えて会計・税務の知識、そして建築・設備・維持保全の知識がすべて必要です。さらにマンション管理適正化法や標準管理規約などの国が示すガイドラインに沿って運営していくことが要求されます。


マンションは管理がしっかりなされていれば100年持つと言われています。

逆に管理が崩壊したら、急激にスラム化するとも言われています。

今、我が国のマンションは、まさに正念場に来ていると云ってよいでしょう。


国が「管理計画認定制度」でやっと重い腰をあげました。

まだまだ不十分です。免許制度にすべきです。


100年持つマンションという名の客船の運航を任されているのが管理組合です。

まずは気づくことから始めましょう。

国家資格マンション管理士がリードします。







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